春のたまご/石瀬琳々
じ込めて
わたしのために鳴いてくれる日を夢見ている
ふるえているのは誰?
いいえ、わたしの心臓かも知れなくて
恋しさに突かれて胸の奥が痛くなる
小鳥はときどきさみしくなる
抱きしめていたいからいつまでも たまごのままで
そっと壊れないようにいつまでも 生まれないままで
ああ、春はまあるいのです
まあるくてやさしいのです
そして意地悪な指先で
わたしをつかまえてしまう
だから逃げようとしても追いかけてくる
生まれようとしている あふれようとしている
わたしの心を
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