春のたまご/石瀬琳々
春はまあるいのです
まあるくて秘密を抱えているのです
淡い色で揺れている わたしの胸のうち
やわらかくて抱きしめてしまいたくなるもの
それともきつく抱きしめて壊したくなるもの
本当は好きって言いたいのに 口をつぐんで
海があるのかも知れない
あのひとの心が打ち寄せる波打ち際があって
わたしは宝物のように大事にしまっている
耳を寄せて聞いてみるのです
もしかあのひとの鼓動かも知れなくて
ひとしずく、こぼれたら溺れてしまいそうで
海はときどきこわくなる
小鳥が眠っているのかも知れない
いつか飛び立ってしまうあのひとの心を閉じ込
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