心のかたち/あおい満月
じまじとみつめている。
不思議な石ころだ、と彼は思う。
石ころには熱があったから。
そして、彼は気がついたから。
石ころが心のかたちをしていることを。
彼は決めた。この石ころを、
大好きな少女に贈ろうと。
翌朝、少年は少女に石ころを渡した。
彼女はどこかあたたかい、
心のかたちをした石ころを喜んだ。
石ころも感じていた。
自分のからだが熱くなる感覚に。
石ころには鼻もないのに、
甘い花の香りを感じていた。
少女は石ころをペンダントにした。
少女の胸元で石ころは海の夢を見ている
石ころは自分の過去も未来も知らないが、
この名もない安らぎに、
確かな今を感じている。
少し前までは、
道の真ん中にいたはずなのに。
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