至福の人/あおば
黒なアスファルトを光らせて
見えない豆を啄ばんで
掃除する人の心を虐げる
キタキツネの缶詰
目立ちがりやの
古だぬき
缶詰の中にフタをして
紅衛兵ども閉じこめた
紅い服着て街を行く
黄色い顔した女の子と
男の子
黄色の衣は綻びて
タクシーを呼んでも
停まらない
ケータイ電話に呼び鈴を
つけたらいいかもしれないと
紅衛兵は考える
赤いポストに
キタキツネの缶詰を
投げ込んで
年末の
集配業務のアルバイトに応募する
タクシーを
停めようとして刎ねられた
古ギツネの死骸を蹴っ飛ばし
掃除の人は嬉しそう
永久に
来ぬ人を待って居られたら
よいのだけれとと言いながら
作 2003年の秋
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