花畑(終)/吉岡ペペロ
 
和夫くんに話し掛けていた。
「あのときはごめんね、あのときはごめんね、ほんとうに、ごめんね、和夫くんはすごいよ、ほんとうにすごいよ、和夫くんのお寺は復活したんだよ、和夫くんバンザイだよ、和夫くんはバンザイだよ、和夫くんバンザーイ、和夫くんバンザーイ」
 涙でにじんで外灯のひかりがたくさんに見える。
 三叉路に出た。左右の道のあちこちに水溜まりがあった。そのすべてが月を映している。お花畑みたいだ。
 ぼくは足をとめ、兵隊さんのように足踏みをした。右の股関節に痛みが走る。それでかまわない。和夫くんもずっと痛かったんだから。三叉路の右をえらんで、ぼくは行進するように歩き出した。そしてはっきりと思い出したアマリリスの歌を口ずさんだ。
 師匠にいまから謝りに行こう、そう思った。




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