花畑(終)/吉岡ペペロ
途中雨が降ってきた。傘をさすのも買うのもめんどくさくてそのまま歩いた。
昭和通りの路地に店を探した。
愛する男を独り占めしたくて、痴情の果てに男の性器を切り落とした女は、六十を過ぎてなお妖艶であるらしかった。
うろついているとなんだか欲情してきた。店はなかなか見つからなかった。迷ってなんどか覗いた路地に店はあった。
ガラッと開けてのれんをくぐると、カウンターと、土間にテーブルがひとつだけあるちいさな店だった。二人連れの客が二組いた。
「お兄さん、雨のなか、よく来てくれたねえ、こっちにおいでよ」
促されるままぼくはカウンターに座った。
阿部定と思われる老婆がタオルをくれた
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