花畑(5)/吉岡ペペロ
ぼくは師匠にうでを見込まれて、理髪店を一軒任されるようになった。へたくそが髪を切ると、髪が伸びるとそこだけ浮いたようになるのだが、師匠に教わったやり方だとそうはならなかった。
髪の毛というのは伸びたときを想定しながら切らなければならない。短く切ったラインを長めに切ったラインでおさえていくのだ。これだと伸びてきてもいい感じで髪は落ち着く。時間がたてばたつほど髪がなじんでくる。
ぼくは子どもの頃から切り絵が得意だった。テーラーや理容の仕事が向いているんじゃないかとまわりに言われるようになって、ぼくは理容の道をえらんだ。
店の空き時間、ぼくは週刊誌を熟読した。お客さんとの会話にも役立ったし
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