花畑(3)/吉岡ペペロ
がね」
え? 和夫くん? ぼくはそらしていた視線をお母さんにあてた。
「きょうの夜ね、さっきだよ、管長様の奥様につづいてね、和夫様が解脱者になられたそうだよ」
「解脱者?」
「凄いよねえ、小学生だよ、あんたとおなじだよ、それが解脱者って、ありがたいねえ、うれしいねえ」
そうだとしたら、ぼくが見たのは解脱した直後の和夫くんだったのかも知れない。でもぼくはそれを言わなかった。まったく言う気がしなかった。だれであろうと、和夫くんについて話すのが許せなかった。
ぼくの勘はあたった。ぼくも、お母さんや鼻の男とおなじであることを思い知ったのだ。
夏休みが終わろうとする頃、和夫くんのお父さ
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