花畑(1)/吉岡ペペロ
 
んのように足踏みをした。お花畑を行進した。足踏みをしながら声を張り上げて歌った。ぼくなりの応援歌のつもりだった。小さい頃、「バンザーイ、バンザーイ、バンザーイ」と、小旗を振りながら三唱して兵隊さんを戦地に送り出したことを思い出した。
 和夫くんの頭上で柿の実が揺れていた。ぼくの足踏みのせい? いくらぼくが太っているからといって、お相撲さんじゃないからぼくで揺れるはずがない。和夫くんは柿の木に背をもたせかけてハーモニカを吹いているだけだ。風が吹いている訳でもない。ぼくは足踏みをしながら、わっさわっさと揺れる柿の実に見いった。そして歌詞を間違えてしまった。
 ハーモニカの音色がちぎれたようになって置き去りにされた。和夫くんが吹くのをやめた。
 和夫くんが片目をつぶって舌をだしてから、
「じゃあ、いってくるよ」
 明るくそう言ってハーモニカをしまい、すたすたと行ってしまった。
 松葉づえの和夫くんが左右に揺れながら歩いていくのを見つめていた。
 ぼくにはただ見送るいがいのことが出来なかった。



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