春眠暁を求めず/木屋 亞万
 
はだしでゆかをあるく
しっとりとつめたい
うすぐもりのふうけい

とても風が強いので
木という木がゆれ
腹黒い雲が急がされる

ガラス一枚越しに見ている
ここはとても安全で
雨も風もなくあたたかい

爪先を整えながら
朝の溶けていくのを待つ
きょうはずっと暗いままだろう

服を脱いでも
身体にまとわりつく
わずらわしさは消えず

水に浸しても
泡で洗っても
腫れ物は治らない

前髪を後ろでくくり
紙と文字の世界に身を投げる
誰も悪くない世界だと物語はつまらない

口の中をゴキブリで溢れさせ
目の水晶体を切り裂き
尻の穴から蛇を入れる

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