春小景/ただのみきや
見えなかったものが見える
ふくらんで
ふくらんでほどけ
ふわり ひらく
ゐろかおりかたちあまく
風に光にとけて
そらを渡るもの
ほそい弦で触れながら
匂やかな詩(うた)の足跡をたどる
もえるいのちの木へ
たどり着いた
はじめのひとりは
すべてを記憶する
ゐろ 大きさ 方角も
太陽の位置
旅立った街
心によろこびの
よろこびの大きさを描いた
地図を抱いて
女は帰る
風と光の道を
からみあう死の網を越えて
すばしっこいものごし
まっすぐに門をくぐり抜け
働く姉妹たちの
真中に降り立って
よろこび踊る
腰をふりながら回る回る
「わたしは
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