玉葱色の眠り/
石田とわ
今夜わたしは玉葱を刻む
包丁の切れ味は鈍いが
こんな夜にはちょうどいい
指先と玉葱と踊る包丁
それだけを見つめ、不器用に
ひとつ、またひとつ刻んでゆく
刻まれてボールから溢れかえれば
いつしかそこは玉葱色の海になる
その中でなら眠りにつけるだろう
つんとした匂いのなかでも
夢は見られるのだろうか
玉葱色の海でならば溺れても
それはそれで幸せだろう
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