死体の頭を数えて、永らえた今日を。/ホロウ・シカエルボク
、そんな風にした本人にすら判ることではないのだろう、上映されない映画館、ロビーの奥にきっと今もあるだろうソファーに腰を下ろして、色褪せた時代の亡霊たちはどんな夢を見るだろう?思えば俺はずっと前からそんなところが好きだった、打ち捨てられた場所、意味を持たなくなった場所、ただ外界と遮られただけの、昔は語るべきものがあったがらんどうの空間、子供のころに忍び込んだロープウェイの廃墟、そんな場所のことは長い間忘れていた、でもいま、そんな理由のすべてが明らかになって俺と共にソファーの上に存在している、俺はきっと、客席もスクリーンも取っ払われた映画館のロビーに腰を下ろして、存在しない自動販売機で存在しない飲み物を買い、次の上映スケジュールを待っている亡霊の仲間なのだ…
日付変更線の丁度真上で一台の車がコントロールを失って路面電車の乗車口に激突した、近くの奴らがぞろぞろと表に現れて騒いでいる声が聞こえる、「これは駄目だ」「死んでいる」「まだ若いのに」俺は半分眠りの中に落ちながら鼻で笑う、何年生きていたかなんて運命とは何の関係も無い。
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