特権/吉岡ペペロ
 
誌を熟読した

お客さんとの会話にも役立ったし

ぼくはあることをいつも探しながら読んでいた

あることとは、少年時代の痛切にまつわることだった

和夫くんのお寺の記事がちいさく載っていた

和夫くんのお寺は再興していた

最近、ほんとうにちょくちょくではあるが、週刊誌に和夫くんのお父さんの教団の記事が載るようなことがあった

あれほど壊滅的な状態におちいって、ちょうどその時期、跡取り息子だった和夫くんまで失って、よく再興したものだと思う

ぼくは嬉しかった

店長というのは名ばかりで店員とさほど給料の変わらない身ではあったけれど

こうしてたまに和夫くんのお寺の記事を見つけると俄然やる気が湧いてくるのだった

ぼくはその頁をやぶりとった

店長のそれが特権だと思って、お客さんの待ち合いソファに週刊誌を戻した







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