灰色景/塔野夏子
 
灰色の薄明の底に
灰色の湖が静かにひろがる
その汀にひとり佇んでいる

灰色の薄明は薄明のまま
明けることも暮れることもない
灰色の湖はただ静かだ
誰の 何の気配もない

ただこの場所は この時間は
こうしてひとり佇むためのもの
そのことを知っているから

この灰色を満たすさびしさも
不思議になつかしく やさしい
私はこの景色の中で
他のどこに居るときよりも
清らかな息をしている




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