ニコチンよ永遠に/アラガイs
 
魔力とはそれを気付いた時にはじめて知ることになる。燻りは太陽を崇め祈りを捧げた。人々は救済を願い、世俗からの逸脱を瞑想の煙に求める。いつの時代も変わりはしないのだ。

一本の煙草が燃え尽きるのはやい
最初にどこでこの味を覚えたのかとっくに忘れてしまった
発ガン性が指摘され出したタールの苦さも
ふと学生をみて思い出すのは、売店でいつもにこやかな笑顔をしていた女性の姿
その前を素通りすると頑丈なコンクリートの階段がある
野うさぎのように軽やかに階段を駆け上がると広い屋上に出た
僕たちにとってそこは戦場へ向かう決死の裏階段だ
見渡せば先着の烏どもが壁に隠れて小さな輪を描いている
まるでひとつの餌でも分けあうような黒いあたまの群れ
ハイライト/セブンスター/マイルドセブン/ラッキーストライク
次々と新しい自動販売機が立ち並んだ時代
やがて手すりを越えてぷかぷかと、白い煙が雲の傍らへ消えていった 。











戻る   Point(10)