ぜんぶ/ハァモニィベル
 
だったのか、とその躰とべろのスケールの違いに
驚く。ライオンに喰われているような錯覚をおぼえた。
 ……永遠のべろんべろんがつづきそうなので耳を掴んで「ゥォラァァァ」と
引き起こし相手を倒すと、今度はお腹をだして抱きついたまま全然
離してくれない。 そのまま地面で、ごろんごろん大喜びだった。




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あのセントバーナードにもし、
言葉があったなら、
どんな春を詠んでくれただろう
―あの大喜びを―
僕は道端の植込みを見るたび そんな事が ふと想い出される。


  自然の中の  美しいものが
  君にみえるよ すべて
  心のなかに、咲いたり
  輝いたり して仕方ないんだ
  この細胞の
  最後の一個まで きみを愛してる
  きみの分子の一個一個まで ぜんぶ











〔一○十六年三月弐拾七日 午前二時四十三分 ハァモニィベル〕

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