貼り紙世界の果て/カンチェルスキス
体っぽい書体である。習字の秀作のような出来栄えで、堂々としていた。朱筆の花丸があってもおかしくなかった。ぼんやり歩いていた私の目が覚めた。
「○月○日○曜日に、いったい溝堀が何をするのだろう―」
急に気になった。その瞬間、私は溝堀のミステリーにはまったのである。
「きっと、その日、溝堀がこの町内において、何かやらすかのだ―いや、おっぱじめるのか―」
そもそも、溝堀は町の厄介者だった。少年時代、町対抗のソフトボール大会で、病欠した者に代わって出場したとき、サードを守ったが、打球をまったくキャッチしようとしなかった。溝堀によれば、「転がってるボールを見てるのが好きだから」と全部、見送ったの
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