闇を背負う人/夜雨
 
 僕は知っている

 満月の夜
 梟の声響く夜半過ぎに
 一の社の榧の古木は
 封じられた記憶、取り戻し

 社裏の小さな瀬に
 小さく泡立つ冷たい流れに
 月の光は毀れ落ちては千々に碎けて
 白銀(しろがね)の鍵となる

 そして獣道の向こう
 山影は境界となり
 扉が開く

  お帰り
  闇を背負う人

  君の背負うものの重さが
  今、降り注ぐ月の光に融けてゆくよ

戻る   Point(1)