呼ぶ/葉leaf
 


幼い日
デパートで迷子になって
必死に母を呼んだ
フロアをひた走り
血眼で母を探して
大声で母を呼んだ

その呼び声は
今も私の中で響いている
私はそれを聞きながらも
日々生活するための
語りの声でかき消して
ついぞ人を呼ぶことをしない

私は今日も迷って
誰かを呼びたくて
しかし誰を呼んでよいのかわからなくて
自分にばかり呼びかけている
おーい、誰か
漠然と呼びかけてみて
振り返るだろう人の顔を
私は実はよく知っている

私は人を呼びたくて
呼びかける相手もたくさんいて
呼び合えばきっと親しさで包まれる
だが呼び声は決して外には出ない
内側でこだまを繰り返して
どんどん積み重なって
ただまなざしの中へとにじみ出ていく

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