ひとつ 羽音/木立 悟
 





空を渡る種の帯の下
あなたは何故暗い笑みを浮かべているのか
原のなかで
明るい風のなかで


無数の角と無数の羽が争い
多くが失われ多くが生まれた
双つの光が向かい合い微笑み
必要な暗がりさえ消し去った


道の中央にある
倒れかけた鉄塔を
窓の無い倉庫を
鳥は 触れるように飛び越えてゆく


砂に埋もれた艦から
何かが発信されつづけている
曇の未明の川岸を
光の霧が光の霧に描いてゆく


無限と万能の争いのなかから
あなたは哀しみと羽を選んだ
あなたはむらさきと
ひとつの角を選んだ


窓の無い倉庫の暗闇の内に

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