北大病院にて/ただのみきや
さん ちゃんと飲まないと死んじゃいますよ」
「フフフフ……」
「ハハハハ……」
毎回そんな会話をしていた
息子は顎の噛み合わせが悪すぎて
矯正だけでは足りないだろう
どうしようもないことだが
どこか
申し訳ない気持ちになる
腹が減った
持ち合わせが少ないから
ローソンでサンドイッチを買って
車を走らせる
息子とはまだ
音楽の趣味が離れているが
音楽の話をするのは良い
息子なりの蘊蓄を
うんうん聞いている
同じ年の頃を想うと
息子はわたしよりずっといいヤツだ
わたしより妻に似たのだろう
神の憐みなのだ
もう一度人生をやり直せたら
うんと勉強して
こんな大学に入って
好きなことをとことん研究したい
あり得ないからこそ
想像するのは楽しくて
ちょっと悲しい
そんな色合いが
酒のように霊のように
ふらっとして
ここちよい日
《北大病院にて:2016年3月16日》
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