『森で釘打つのは誰?』/るるりら
なにもかも捨てておしまいなさいと
無闇に心臓に くりかえしていた
いたいのいたいのとんでけとんでけの耳の指示どうりに
しでかしてしまった空虚を
空に放つと 釘を打つ音がする
清水さんちの敷地のわきから せり上がった山の木々は
切り取られ
切り株は 芯のところに まだ水を蓄えている
清水さんちの隣に入居した日を知っている年輪が あらわだった
切り株だけは 覚えていてくれるだろう
わたしの家と清水さんの間には 不思議な木があったことを
雨上がりの樹木は みな うつくしい雫を湛えていて
その中でも えも言われぬ艶やかな緋色をしてた果実。
本には。宿木。と あった
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