洪水反射/本木はじめ
 
もう一度白い世界さ何もない何もないのさすべて以外に


聴こえるかい草原をゆくぼくたちの忘れたすべての木々のざわめき


もぎ取った翼を売ってぼくたちは生まれたのだときみに言われた


夕ごはんに花びらだけを食べるきみ明日ふたりで病院行こうね


つかまって追い駆けていたものを知る知らないあいだに遠くを見てた


歯ぎしりが止まらないからねむれないやさしいひとよおやすみきのう


いま一番欲しいものって何だろうたとえばきみの襟足の影


きみの名を呼べばたちまち積もりゆく雪の白さに喪失を知る


きらきらと光の洪水反射するきみのひとみが閉じてゆくとわ


くすんでる視界に映える花々に目薬おとすゆっくりねむれ


サイレンが聞こえないから慌てないあなたとゆう名の炎は冷たい


手を洗う水がいつしか尽きるまで息がいつしか尽き果てるまで


うつぶせてあなたのいない部屋のなかあなたのいないわたしがいるだけ


届かない想いを綴る幾日もここから一番遠いあしたへ





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