春葬列/ただのみきや
 
土手の手つかずの雪が老いて
カラスがなにやら啄んでいる

穏やかな冷気に衣服の戸惑い

惜しめば儚く望めば遠く声は
なにも残さないただ揺らした

言葉が追う死者を追うように

セーターをほどいてもう一度
毛糸にするなにが消えたのか

あの橋は冗長で渡り切れない

樹木の影が淡く路を塞いでも
誰も避けない頭の中のように

記憶は貝の中の沈黙膨らむ蕾

花びらの蘇生を恐れずに人は
多くの時代をゴミ収集に出す

写真が風に舞う夢も現もない



            《春葬列:2016年3月9日》





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