白いサプリメント/そらの珊瑚
朝
街はすみずみまで霧に覆われていた
平等に満ちている粒は
白いサプリメント
普段は透明が満ちていて
遠くまで見渡せた
海に点在する小さな島や
船が描いてゆく波のような道までも
いまはもう
めじるしになるものさえ
たしかめるすべがない
陽光さえ乱反射し
東はどちらなのかも
朝
であったのかも
もはや、あやうい
てのひらに載せた錠剤が
薬なのか
毒なのか
不確かなまま飲めば
(飲まないという選択肢はなかったし、
どちらにしても同じという気もした)
胃の中で音もなく溶け出し
血管という道を通って
拡散されてゆくだろう
わたしが東へ帰ろうとしていたことも
幻想のたぐいであったのかもしれない
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