日かげから日なたへ/遙洋
駅からでてすぐの交差点
横断歩道のこっちがわに祖父がいた
うしろ姿だけですぐわかる
人の往来のなかで
ならったこともないのに詩吟を
ほんと、なんで詩吟なんか
でもその昔やってたのかもしれない
だってインコを飼って可愛がってたってことも
ついこの間まで知らなかったくらいだ
かわいた風にほこりが舞う
かすれた声をはりあげてるのに
だれもふり返ったりしない
なんかすごく、ものがなしい
その時点でもまだ
ゆめだと気づかなかった
日かげから日なたに
あっちには若いひとたちが次々に入っていくカフェがある
何うたってるんだろう
じいちゃんの声で再生されている詩は
この世のどこにあるんだろう
そんなこと考えてて
目がさめてもしばらくの間
なにから調べたらいいか、とか
この世の広さに圧倒されていたんだ
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