蜜柑をむく女/そらの珊瑚
 
蛇口が
みずうみにつながっているように
蜜柑は
五月の空へつながっている
かぐわしい白い花
まぶしい光に
雨だれに
ゆっくりと過ぎてゆく雲に

蜜柑をむくと
その皮は
しっとりと柔らかく
はなびらのかたちにひらいてみせる
ひらいてそうして
おしまいになる
果実を手放し
あとはあっけなく
ひからびてゆくだろう

わたしは
どこへつながっているのだろう
爪の先がかすかに香る
刹那の命

今週末
冬は気化され
春になる予報
そんなふうにすべての天気図が
理由もなく過ぎてゆくことを
恨んだりしない蜜柑が
ここにある
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