鎖骨の彼/
 

彼を見たとき
彼の声を知っている
そう
思ったんだ

彼の睫がとても冷たいことも
知っているし
彼の鎖骨が氷のように冷たいことも
知っているし

知っているし

って言っても彼とはたまたまボーリング場のトイレの側の自動販売機でメロンソーダを買っていたのを盗み見してみただけで目が瞬きしたのを一回だけみることができた。


その彼の瞳は、黒い黒い色だった。

何かを考えているの?
   と質問してみたい衝動。

でも、彼との視線は絡まない。

何を思っているの?
  想像する好き勝手に。

彼は、誰かを探しているふりを
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