ちいさいのこと/はるな
 
わたしにそれがよく見えないようにレジにかぶさるようにして会計を済ませた)。四本たてて火を点けた細いろうそくを娘はじっとみて―ふいてごらん、とわたしたちが代わる代わる促してもそのままじっとみて―吹いて消してを三回繰り返させた。また点けるの?と楽しそうに言う夫、かちっと音をさせてつくガスライターの火。
しばらく経てば忘れてしまうこまかい物ごとをいとしく思う。

帰りしな買った桃の枝は六本包まれていた。三本ずつに分けて瓶に活ける。実家からもらってきた瀬戸物のお雛様の脇にひと瓶、台所のチェストのうえにひと瓶置いた。わたしたちの家はちいさいので、ふたつとも玄関のお雛様の脇に置くと邪魔になってしまう。そ
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