感覚/鷲田
 
めよう
見えるのは今日の、今の、この瞬間の景色だ

何が起ころうが恐れはしない
雨の冷たさに濡れて感じる寒気が私を勇気付ける
恐れるのが明日なら
明日を忘れて生きればいい
恐れるのが未来なら
未来を忘れて生きればいい
存在するのは今だ
横たわる私の身体一つだ
恐れるのが現在ならば
この冷たい雨を浴びればいい
そして、感じればいい
その冷たさを、その寒気を
それは恐怖でも不安でもなく
一つの感覚だけなのだから

私達が期待し、希望し、不安に思っているのは
遥かな未来
まだ見ぬ明日
それはまだ存在しない設計図
私達に重要なのは一つの感覚
一杯のコーヒーを美味しいと感じるその感覚
感覚に恋をせよ
感覚に生きよ
そして今を見つめよ 
その瞳の光はここの景色を見るためにある
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