感覚/鷲田
 
明日を生きることを辞めれば
私は現実を見ることができるのだろうか
現実は淡い霧の中に
木漏れ日の陽光が漏れる場所
明るさは角度に反射し
暗さにより大半の視界を覆う
私の視力は世界を見るために与えられた力
生い茂る樹の葉の緑色を
そこにぶら下った赤い果実の身を
ただ食すという事実のために

夢と言う幻想に憧れを捨てることが出来れば
ここにある一杯のコーヒーの旨みに
幸せを感じることが出来るであろうか
幸せの歩みは
遥か遠くから聞こえてくるものではなく
それは固いアスファルトの上を歩く
日常の足跡
私は歩んでいるのだ
今を!今を!今を!
道の果てを問うのは辞めよ
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