活イカ/ただのみきや
無い背筋を伸ばし
まな板の上にぬっと立つ
おまえの
下段から冷たく射るような
視線――まったく読めやしない
包丁を握り
ジリジリと
間合いを詰める
――突然
ながい触腕(しょくわん)が手首に巻き付いた
《おのれ素早い奴め》
いっそこのまま引き寄せて
包丁で一刺にしてやろう
ところが奴のトンビ口が
おれの包丁を白刃取りで止めた!
予想以上の手強さだ
するともう一本の触腕が死角をついて
おれの膝を搦めとる
《しまった! 》と思った時にはすでに遅く
スミをくらって視界を塞がれてしまい
あわてて顔を拭う ―――《殺気! 》
残り八本の腕がおれの頭に飛びついた
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