花々/春日線香
 
こうして呼吸をしている間に
心臓の鼓動の間隔を計っている間に
花瓶に挿した花の首はぽろぽろと落ちて
次の花に替えられていくだろう
それもまたあっけなく落ちて
替え続けることでしか
花を記憶することができないのなら
やがて悲しみはいや増すだろう
それが美しいものであってほしい
さらに美しい痛みであってほしい
熔けた鉄の熱が胸に灯り
内側から身体を焼く
夢のような地獄を得ることができるのなら
天国はいらない
天国など必要ない
花々は血の色を湛えて咲く
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