沈丁花/吉岡ペペロ
局個体だろ。ひとりの人間がいまつけれる宝石にしても、いま胃に入れる食いもんにしても、だから時間だってそうだ、有限だろ、限度があるだろ。金が幾らあったところで知れてるんだよ。だから納得のできる金の使い方を探して、ぼくはさまよってるのさ」
「じゃあ、年金なんていらないですよね」
「いらないよ、断りたいよ。でもぼくは社会保険料なんてほとんど払ってないんだけどね」
「そんなこと出来るんですか」
「簡単だよ、自分の会社に何十億も貸し付けてその利子を懐に入れてるから。利子収入には社会保険料がかからないからね」
富裕層はそれからフェラチオの話をした。「女が何人いたところで、ちんぽこひとつに口ひとつ、それにフェラチオって実際痛いじゃない、歯があたってさ。金があるってのは、フェラチオみたいなもんなんだよ」
繁治は聞き流しながらフェラチオになんかに興味はないと思った。押し入れのなかの姉のことを思った。あんたがいらないとか言ってるその年金のために、俺は死体を隠してるんだよ。
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