沈丁花/吉岡ペペロ
 
 岡村隆史のオールナイトを聴きながら御苑トンネルをぬけて甲州街道を飛ばしていた。飛ばすといってもお客さんにありつかなければならない。左側に気を付けながら繁治はダッシュボードに目をやった。
 さっきコンビニのまえに停めて休憩していたとき、弁当の匂いがのこらないように助手席の窓を全開にしていた。すると歩道からなにかいい香りが入ってきた。
 車から出てコンビニの明かりをたよりに匂いのもとを探していると、歩道に植わっているツツジみたいな緑からしているのがわかった。緑のおもてに蕾の粒がたくさんついている。昆虫の卵のようにも見える。眺めまわしていると、それは薄い黄緑いろであったり、紫いろであったりして、い
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