夜毎の木乃伊/岡部淳太郎
私は眠る
掛け蒲団の左右を身体の下に折りこみ
脚をやや開きぎみにし
両手を身体の脇にぴったりとつけた
直立不動の姿勢で
寝袋にくるまる旅人のように
防腐処理を施され
身体中を布で巻かれた通俗木乃伊(ミイラ)のように
首から下を蒲団にすっぽりと包まれて
じっと天井を向いたまま
深い
そして浅い
眠りの中へと入ってゆく
夜毎
一種の儀式のように繰り返される
木乃伊の眠り
もちろんわたしはファラオでもなければ
太陽の子でもない
ましてやドドンゴの使い手でなどあるはずがない
私はただ眠る
木乃伊の姿勢で
まるで眠っているみたい
と称される死者のように
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