もう、キット雪の日/らいか
間を待ちわびていた。
風が吹くと、雪のツブテから頬を守ろうとその人は半分振り返る。
慌てて別の方に目をやり首を振った。
電車がくるまでの時間そんな事を何度か繰り返し、そろそろ寒くなってきたころ
その女性はホームの淵からこちらのベンチに背を丸めて歩いてくる。
「となり、いいですか」
「どうぞ」
びっくりして荷物を置いた隣のスペースを空ける。
はっきりみえなかったけどきっと美しかった。
隣を振り向けば目が合う。
緊張するので、向かいのホームに自分の気をそらせていた。
そろそろやっと待っていた電車が来た。
そのひとは、どの駅で降りるかわからないけど僕は次の駅でおりた。
雪が降るとまたあの重装備が見れるんじゃないかという好奇心に駆られ、時々、列車を見
送ってみたけど
顔もはっきり見えなかったその人は、春になった今、もうきっと逢えないんだ。
戻る 編 削 Point(0)