ファントムペイン/ただのみきや
見つけられないものを探している
とっくに失くした何かを
例えば棚で眠っている本に挟まって
頭を覗かせる封筒
歳月に黄ばみ
だが秘められた部分は青白く
ほのかに
呼吸して
机の上で宛名を綴る
固い音
息を殺して
ペン先を凝視する人の
少し 猫背の姿勢
今でも目に浮かぶようで
出会いがしらの事故みたいに
水や氷で薄めていない
過去との邂逅を求めている
行く末に楽しみも喜びも描けず
ある日ひとりでに
霊の緒が透けて
ほどけるように
すべては目覚めの夢の如く
そんな日を待っているのか
老いという箪笥に仕舞い込むには早い
ふとした仕草に青春の面影を残
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