たとえばこれが10月の/はるな
 
ところや、コートを出し始めるところなんて。
たとえば娘の寝息のない夜や、夫のスーツのないクロゼット、ドーナツなしの日曜日なんて想像できないみたいに。
2月が終れば3月がくるのだし、2月がおわるまで3月はこない。そして3月がくればすぐに夏になって、わたしたちはいくつかの問題に深刻になりすぎることもなくなる。日がすこしずつ長くなる、生活は少しずつ明るくなる、問題を後回しにするという選択を思いつく。
10月が来るまでには娘の髪をなんども切るだろうし、紫陽花の新しい花も咲く。
咲く、そして、枯れるのだとしても、わたしはそれをまた理解しようとする。
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