忘れたことが多すぎるけど少し/竜門勇気
 


一度に開けるページが僕の詩で埋まった。
軽薄でカラッポな自尊心が少し埋まった。
僕は飢えていた。飢えすぎて食うのを忘れていた。
詩に批判的な感想がついた。それが満腹のバケモノのゲップに見えた。
僕は噛み付いた。僕は汚れた枕の上で泣いた。
管理人さんは僕より怒った。僕は何がなんだかわからなくなった。
僕は立ったままでも目を覚ましたままでも泣いた。
傷ついた自尊心に瘡蓋ができた。癒える兆しだった。強くなる兆しだった。
それを僕は台無しにした。強くなることは負けだと思った。
鈍感になることだと思った。強さは暴力だとしか思っていなかった。
みっともない感情を誇りにしていた。
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