前触れ/ただのみきや
光と冷気が青い燃料だった
破れた財布から千円札を出して
印鑑ケースとノートを買う
郵便局には月に一度往く
記憶喪失の犬みたいに
今も雪原から突き出している
枯れ果てた雑草を見ていた
夏の姿のまま色あせた
過不足なき美醜
生と死の境は定かではなく
《》みたいにおれを括ったまま
冬の陰は蒼い錯覚を孕んでいる
視線はもう七人の女を殺した
三人は松明のように
後の四人は分離した
霊と魂と体
三枚に下ろす
顔や乳房の側と背中の側
背骨はふさわしい彫刻
白い冬の宮殿に
子供たちが湧き出して来る
今朝方夢で見たポリネーションと発電のために
政府が開発した無数のカラー
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