にこやか市場/wakaba
ました
次から次へと商品が消えていきました
僕も早く買わなきゃと思いました
僕はお魚がどうしても食べたかったから
だから腐ったお魚を1尾だけ買いました
できるだけましなものを選んで買いました
買ってしまいました
切れ味の悪い包丁がじんわり刺さるような
そんな痛みが胸を走りました
二度と緩まない縄が首を絞めていくような
そんな苦しみが肺の中であふれました
僕は絶叫してしまいそうになりました
全身の毛穴から熱い汁が吹き出ました
お魚を食べたい
僕はただお魚を食べたいだけ
ただそれだけなのにどうしてって思いました
空は混じりっけのない青色をしていました
カミソリのように鋭い地平線の上を
たくさんのカモメたちが羽ばたいていました
僕は腐ったお魚を持って家へ帰りました
きっと死んだ顔になって家へ帰りました
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