三つ葉/梼瀬チカ
中の三つ葉を見て
去年田舎の裏庭で三つ葉を摘んでいた
歳の行った叔母の声を思い出す
「三つ葉はね葉の開いたものは固くておいしくないのよ
まだ丸く葉の開いていないのが柔らかくておいしいの」
『私も確かにそうだったの?』
「昔三つ葉を摘んでいた人がそう教えてくれたけど
その人は亡くなった」
夕焼けの陰に隠れるよう
暗い面影を隠すよう
叔母は言う
「その人に教えたと言う三つ葉を売っていた人も亡くなった」
私はもう一度暗がりの三つ葉を見る
開いてしまった三つ葉を
「バイバイ」
「バイバイ」
子供たちがまた明日会えるのに
いつまでも繰り返しているのを聴きながら
私の明日はいつまで続くのかと
すっかり暗くなったマンションの庭を通りすぎ
大きなマンションの小さな家の灯りに入る
戻る 編 削 Point(2)