愛/葉leaf
いた。定義も容貌も感触もないまことの愛、それがどれだけ腐っていようと汚れていようと私もともに腐って汚れていきますから。愛をください、と発語した瞬間から愛は愛でなくなってしまう。喉を通り鼓膜を震えさせてしまった以上、もはや愛は音楽に堕してしまうから。音楽のように金属的に伝達されるものは愛ではなく、臨在する気配を感じあい、各々の唯一の具体性を握りしめること、それが愛である。そして、まことの愛とは、愛がその表皮を一枚ずつ剥がしていき、ついに空無しか残らなくなったところに緊迫している人間のかなめそのものである。つまり、愛をください、とは、あなたのかなめをください、という貪欲な願いであり、それは己のかなめと交換することで初めて可能になるのである。私は私でなくなりあなたはあなたでなくなる、その宇宙のねじれの部分にまことの愛は交換と共振の運動として発生する。愛をください、とは、愛をあげます、と全く同義である。
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