うたたね/ただのみきや
弄されてあらすじを失くしていた
回想が女の髪のように辺りを覆う
美しい水死の花にこころは躍り
見開かれた闇に自己像のネガ
溺れ際の心地よい発泡
錯綜する言葉の足音 残響は光となり
――目を覚ます
瞬間の赤ん坊は
握っていた 小指の先ほどの
神秘を 切なく 霧散して
現の空白を前に ただ老いる
かすれ果てた筆は影すら引けず
ただの棒切れであることに戸惑う
可逆性の種を夢と呼ぶ
イメージに変換できない真実が
わたしを殺しにやって来る
詩種(うたたね)は輪廻する
《うたたね:2016年2月10日》
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