うたたね/ただのみきや
 
くるりと足を上げ
飛沫もあげずに潜って往く
小石のように すーっと
光がゆらゆら届く辺り
うたたね だから
すぐにまた浮上できる辺り


食事の後 うっかり
文字や何かに集中しようと
すると また すーっと
意識を外にうっすら残し
夢の浅瀬へ素潜りして
なにやら 探している


重なりそうで重ならない二枚の懐殻 
遠い人手が招くように戯れる 
胸がぱっくりと裂け 沁みてくる
小魚たちのクスクス笑い
裸でいる 恥ずかしい裸
水底で鈍く反射する 
銀の弾丸 みたいな あれは
――詩種 
つかもうとして 
つかめなかった
物語は
読めない潮流に翻弄さ
[次のページ]
戻る   Point(12)