血の笑う声/あおい満月
)が、
妙に奥歯に引っ掛かっていた。
それからだった。
私が毎晩見る夢に犬が出てくるように
なったのは。
私は今、
古い図書館で見つけた、
ある記事の前で凍りついている。
1986年夏の某日、
遠く欧州の地で奇妙な殺人事件があった。その被害者は、
どこかで見たことがある美しい女性。
そして、
加害者というのが…。
私は頭が真っ白になり、
気がつけば雪道を走っていた。
何かに躓き転んだ。
膝にみるみる、
血の笑いがひろがる。
それは昔、父が見せた、
私の血を嘗めて「美味しい」と笑った
薄い三日月の唇を思わせた。
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