井上靖小論/葉leaf
 
リーを語るし、実体験を語るし、鋭い認識を提示する。虚構の言語の戯れを詩として提出することはなかった。
 彼の詩はあくまで彼の人生に根差しており、はっきりした参照点を持ち、はっきりした物語の起伏を持ち、丁寧に描写を行い、明確に批評を加える。それでありながら、なぜ彼の詩は詩であるのだろうか。それは彼が、「叙事的叙情」とでも呼ぶべきもの、また「批評的叙情」とでも呼ぶべきものを最大限活用しているからである。
 私たちは、小説を読むとき、その筋の展開に戦慄したり、その描写の巧みさに感銘を抱いたりする。これを私は「叙事的叙情」と呼びたい。井上はこの叙事的叙情を彼の詩の中に凝縮して表現するのである。また私た
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