お帰りなさい。/梓ゆい
 
『白い箱。』
それがお父さんだと
どうやって信じれば良いのだろうか?

両腕の中は
最後に抱えた身体よりも重く
悲しい位にのしかかった。

(八ヶ岳の青さに混じり、遺影の輪郭線がぼやけて見える。)

そっと包んだ白い箱は布の感触がして
火照るような暖かさを感じない。
それでも私は離れる事が出来なくて
腕の中のそれを再び抱きしめる。

(微かに聞こえた、お父さんの声。)

見上げた雲が
霧のように霞んで見えた。


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